蒔絵万年筆の制作工程(2)漆上げ

今回は『漆上げ(うるしあげ)』工程をレポートします。

使用する漆は粘度が高く乾燥を遅くした『うるしあげ』専用の漆です。これを「漆上げ漆(うるしあげうるし)」と呼びます。漆に厚みが出るように書きます。表面がむらにならないように気をつけます。粘度の高い漆は筆をゆっくり動かすことでしか扱えないので時間を要します。

乾燥には回転風呂に入れ漆が垂れることを防ぎます。急激に乾かないように気をくばります。

今回は滑らかにきれいに硬化してくれました!

乾燥に失敗すると「縮み」という状態になります。

漆は温度と湿度を与えると乾燥(硬化)しますが、与える湿度が高すぎると表面だけが硬化して中が生乾きになります。

強く凹凸を出したい時、漆を厚く塗ります。しかしやり過ぎると縮ませてしまいます。漆上げ漆の調整、塗りの厚み、乾燥時の湿度、をうまく調節する必要があります。

漆上げ漆は各々蒔絵師が自分の理想にあったものを試行錯誤して作っています。そこには蒔絵師の漆に対する考え方、効率性によって個性が出るところかな思います。当工房で使っている漆上げ漆と教わったことのある他の蒔絵師さんの漆上げ漆では全く作り方が違いました。どちらが正しいではなく、その仕事の用途にあっているかだと思っています。各仕事場にはそこに適した材料、道具、段取りがあるものです。

当工房ではさらに粘度を高くした漆上げ漆もありまして用途によって使い分けています。


そうは言っても縮むことはありまして、時間のロスは痛いですが、切り替えて対処するしかありません。このように縮むと全部やり直しです。

次回はいよいよ金粉を使います。

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