蒔絵万年筆制作工程(3)地塗り、粉蒔き

蒔絵万年筆の制作工程を動画を使ってご紹介します。今回は粉筒を使って金粉を蒔いていきます。

蒔絵用の筆は大きく二種類あり、線を書く筆と面を塗る時に使う筆(丸筆)に分かれます。今回の場合、塗る面を縁取りする線書き用の筆をフチガキと呼びます。

作業の流れとしてはフチガキで輪郭を書いて丸筆で中を薄く塗り金粉を蒔きます。

蒔絵万年筆制作工程

金粉は吉井商店の焼丸10号を使用しました。

蒔絵粉の種類や蒔き方によって粉筒を使い分ける必要があります。

そのため粉筒は多くの種類が必要で筒の太さも様々あり、網目はメッシュや平織りの布地、ストッキングなど他にも素材を問わず使われています。市販の粉筒もありますが各々蒔絵師は用途にあったものを自作して表現の幅を広げています。

筒を指で弾くことで金粉を漆を塗った面に蒔く作業は偶然性が多分に含まれることになります。なかなか難しいですが、良い具合に蒔けると気持ちの良いものです。作り手が完全に仕上がりをコントロール出来ないことが却って面白味になるのかなと思います。

蒔絵万年筆の制作を動画を使ってご紹介します
粉筒

金粉を蒔く時に指を弾く動作を長時間していると腕が疲れて指が動かなくなるという経験は誰しもしていると思います。

蒔絵万年筆の制作工程(2)漆上げ

今回は『漆上げ(うるしあげ)』工程をレポートします。

使用する漆は粘度が高く乾燥を遅くした『うるしあげ』専用の漆です。これを「漆上げ漆(うるしあげうるし)」と呼びます。漆に厚みが出るように書きます。表面がむらにならないように気をつけます。粘度の高い漆は筆をゆっくり動かすことでしか扱えないので時間を要します。

乾燥には回転風呂に入れ漆が垂れることを防ぎます。急激に乾かないように気をくばります。

今回は滑らかにきれいに硬化してくれました!

乾燥に失敗すると「縮み」という状態になります。

漆は温度と湿度を与えると乾燥(硬化)しますが、与える湿度が高すぎると表面だけが硬化して中が生乾きになります。

強く凹凸を出したい時、漆を厚く塗ります。しかしやり過ぎると縮ませてしまいます。漆上げ漆の調整、塗りの厚み、乾燥時の湿度、をうまく調節する必要があります。

漆上げ漆は各々蒔絵師が自分の理想にあったものを試行錯誤して作っています。そこには蒔絵師の漆に対する考え方、効率性によって個性が出るところかな思います。当工房で使っている漆上げ漆と教わったことのある他の蒔絵師さんの漆上げ漆では全く作り方が違いました。どちらが正しいではなく、その仕事の用途にあっているかだと思っています。各仕事場にはそこに適した材料、道具、段取りがあるものです。

当工房ではさらに粘度を高くした漆上げ漆もありまして用途によって使い分けています。


そうは言っても縮むことはありまして、時間のロスは痛いですが、切り替えて対処するしかありません。このように縮むと全部やり直しです。

次回はいよいよ金粉を使います。

蒔絵万年筆の制作公開(1)型押し

蒔絵万年筆の制作工程を完成までレポートしていきます。

一回目は型押し工程です。図案を挟んだプラ板の上に筆で細く漆を乗せていきます。書き終えたら専用の紙に刷毛で抑えて模様を写し取ります。その紙を今度は万年筆の軸に乗せて場所を合わせて刷毛で抑えて模様を転写します。

最後に模様が見えるように銀消粉を蒔いた後、乾燥させます。

紙に写した型は複数回使用できます。何度も写して型が薄くなり見えづらくなると今度は紙に直接、筆で書いて漆を乗せて使います。

稀に書いている途中、紙が動いて線が潰れることがあったりします。型を汚すとしばらく気分が悪いものです。

次回は漆で盛り上げて地面に凹凸をつける工程です。

山崎裕見子、晃岳コラボ蒔絵ジュエリーのサイトリニューアル

山崎先生とお仕事をさせていただいて早14年が経ちました。

これまでにたくさんの発想や刺激をいただいて技術的、デザイン的に進化して益々、蒔絵とジュエリーの融合が進んでいると感じます。

今回、コロナの影響で思うように外出できない状況ですから蒔絵ジュエリーの新サイトに行かれ少しでも楽しんでいただければ幸いです。

新サイトへは画像をクリック